2011年8月23日火曜日

タイムマシン経営とグローバル化

今週の東洋経済が「10年後に食える仕事、食えない仕事」という特集を組んでいた。この特集を見ていて、ソフトバンクの孫正義氏のタイムマシン経営(アメリカの最先端事例を日本に持って来れば、何年か遅れて日本でも成功する)がまだ機能しているのでは?と思った。なぜなら、この記事は私が10年前アメリカの大学院に留学していた時に読んでいたビジネス・ウィークやフォーチュンの記事で議論されていた内容そっくりだからだ。

私は企業のグローバル化を考える時、10年スパンで物事を考えることが大事だと感じている。つまり、10年前のアメリカ企業の動向を見れば、次の10年で日本がどう動くかが想像できるし、今のアメリカ企業の動向を見れば、20年後の日本そして日本企業がどうなるかがある程度予想がつく。それは、良い悪いかは別として、アメリカが新しいビジネス手法で世界経済をリードし続けているからだろう。

今から11年前の2000年、米フォーチュン誌の「最も称賛される企業」ランキングで圧倒的な1位だったのは、そのグローバル戦略とマネジメント手法が評価されたGEだった。当時、私はコーネル大学大学院で人材マネジメントを学んでおり、同校の多くの卒業生はGEでの就職を希望した。当時のGEは、買収した会社をシックスシグマやリーダーシップ育成などのGE流のマネジメント手法で改善し、必要とあれば売却するというM&A戦略で成功を収めていた。オペレーショナル・エクセレンスを追及すれば、利益があがる時代だったのだと思う。

そんなGEが自社のビジネスプロセスの効率化を更に進める為に、BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)ビジネスに参入していったのはある意味必然だったと思う。BPOをまずインドで開始し、そして中国、東欧へと展開していく。そして、2001911日に同時多発テロ時間がアメリカで勃発し、その結果アメリカ経済は深刻な不況に陥っていった。しかし、製造業を中心に業績不振が続く中、アップルやグーグルなどのシリコンバレーIT企業は急成長を遂げていった。いわゆる産業構造の転換が起きた。

アメリカ企業は人件費とオペレーション・コストのボトムラインの削減と新興市場での成長機会を求めて、グローバル化へと一気に舵をきった。この流れを受けて、GEは他社にもBPOサービスを提供していく。中国市場の急成長とこのグローバル化の波を体感したく、コーネル大学院卒業後は、GEジャパンではなく、GEチャイナのBPO部門に人事として就職した。ここで中国人との共同作業、中国人部下のマネジメントという貴重な経験を得た。その後2004年に、GEのBPO部門をスピンアウトさせる目的で、投資ファンドの資本を受け入れたタイミングで、GEジャパンに異動した。

私は、その後、グローバルコインの裏側、つまりイノベーションを体感したく、2006年にグーグルに転職した。そこで私が見たのは知識労働者が中心の組織をグローバル化し、イノベーションにつなげる方法だった。それは、プロセス改善とは対極の世界だった。そして同時多発テロから10年が経過した2011年。

2011年の「最も称賛される企業」のトップ10内にGEの姿はなく、代わりにアップルとグーグルといったシリコンバレーのイノベーション企業が1位、2位を占めた。この10年で、オペレーショナル・エクセレンスからイノベーションへ時代がシフトしたのだ。

では、アメリカがたどった過去10年から日本の今後を予測してみよう。2011年の震災後から2015年まで、製造拠点の海外移転とBPOを中心とした企業のコスト削減努力が一層すすむ。そして、2015年あたりからイノベーションに卓越した企業が成長を始め、2020年にはイノベーションが日本企業の最重要課題になる。予測がどの程度当たるかは10年後ではないと分からないが 笑)

このような状況の中、個人が生き残っていくにはどうすれば良いだろう? 私は、「英語」、「MBA」そして「リーダーシップ」というグローバル時代の3種の神器を身につけなければいけなくなると思う。この3つは全てグローバルビジネスの共通言語だ。この3つがあれば、この荒波を乗り切り、グローバル社会で活躍できると思う。

2011年8月20日土曜日

価値観の明確化

強い企業はビジョンと価値観がはっきりしていることが多い。たとえば、ジム・コリンズとジェリー・ポラスの著書「ビジョナリーカンパニー」に登場しているような企業、GEやディズニーなどを想像すると、それぞれどんな会社で何をしようとしているのかがわかる。そして、その独自なビジョンや価値観に惹かれて、多くの人が入社を希望し、入社した後はビジョンの実現に向け努力する。

個人も同じだと思う。自分のビジョンと価値観を明確化させることで、同志が集まり、ビジョン達成に協力してくれるのではないだろうか。グローバル企業のリーダーシップ研修でも、この作業に最も多くの時間を割く。

私も独立を機に、今一度自分の価値観の明確化を試みた。39年間生きてきて、何を大事にしてきたのか、これから何を大切にしていきたいのかを言語化したら、下記のようになった。名付けてSuzuki バリュー :) 


Open, Fair, Cool, Appreciation

1:Status(地位・学歴・職歴・人種など)は関係ない
一人一人と一個人として対等に付き合う。

2:来るもの拒まず

3:人を否定しない
意見の対立はOKだが、自我をむき出しにして相手を批難しない。

4:思い込みを捨てる
迷ったら、行動してみて考える。

5:カッコつけない
かっこいい人にはなりたいが、かっこつけている人は格好よくない。

6:感謝の気持ちを常に持つ

ビジョンや価値観は自分の内面から滲み出てきたもの、つまり自分が本当に信じているものでなければ意味がないと言われる。果たして自分はこの価値観をどこまで体現できているだろうか?

皆さんもビジョンや価値観を明確化する作業を行ってもらいたい。ビジョンや価値観は状況が変わった時は修正して構わない。今、感じていることを素直に表現してみて欲しい。

2011年8月15日月曜日

権力を握る人の法則(書評)

私が尊敬するアメリカの人材マネジメントの学者のひとり、ジェフリー・フェファーが「権力を握る人の法則」という本を書いた。この本を読んで、正直驚いた。彼の「隠れた人材価値」や「人材を生かす企業」をイメージしていた私にとって、この本はポップス歌手がいきなりハードロックを歌いだすような衝撃があった。

フェファー教授は西海岸のスタンフォード大学のMBAで教えており、継続的に高い業績をあげる企業の仕組みには普遍性があるというハイパフォーマンス・ワークシステムの提唱者として有名だ。ハイパフォーマンス・ワークシステムは、シリコンバレーの文化に影響を受けてか、性善説に基づく人材マネジメント(成果主義バリバリというより、信頼をベースにし、人材の能力を最大限に生かすにはどうすれば良いかという発想)の印象が強い。グレートプレイストゥワークのリストの上位に入ってくるような企業をイメージしてもらえれば分かりやすい。

一方の戦略人事はもっとマキュベリチックな現実主義で、コーネル大学などの東海岸の大学が中心になって研究している。東海岸にはGEIBMなどの歴史が長い伝統的な企業が多いので、学者の研究対象もそのような企業が中心になる。こちらは、フォーチュンの最も称賛される企業リストの上位にランクしているような企業をイメージしてもらいたい。

さて、ハードロック歌手としてのフェファー教授の評価はいかに?教授の膨大なリサーチを基に実務家にすぐ役立つ内容を提供する姿勢は全く変わっていない。相変わらずとても実践的で素晴らしい。ハードロック歌手としても十分合格だ。

この本でのフェファー教授の主張は、仕事ができて人格的に優れていても、政治的にうまく立ち回れないと組織では成功できないとのこと。そのためには、人より目立つこと(出る杭になる)、役立つ人脈を構築すること、人を褒めること、周りからの評判を良くするためのイメージ作りなどが必要としている。

確かに、組織にいると、「この人は出世する」と思った人ではなく、「え?あの人が?」というような人が出世街道にのることはある。強い企業はタレント・マネジメントがしっかりしているので、これが少ない気もするのだが。。出世するには、人格を磨くことの他に、組織内のポリティクスをうまく処理できるようにならなければいけないのだと改めて感じた。

2011年8月2日火曜日

9月26日(月)人材マネジメント協会にてセミナー開催のお知らせ

926日(月)に人材マネジメント協会主催のHR Cafeで講演します。
グローバルに通用するリーダーシップの型とその身につけ方
を自身のグローバル企業での経験を交えてご紹介します。

テーマ:グローバル・リーダーシップの磨き方(仮題)
開催日時:2011926()18452045
会場:日本生産性本部 生産性ビル セミナー室(JR渋谷駅徒歩7分、渋谷区渋谷3-1-1

http://www.jshrm.org/event_2645.html